CheckMate274 がん専門への道 勉強用書き散らし
*医療関係者のみ閲覧お願いいたします。あくまで私的な勉強のための記事です。
筋肉侵襲性尿路上皮癌に対するニボルマブでのアジュバント フェーズ3試験を解説
(引用:小野薬品 オプジーボ製品情報より)
*CheckMate274 New England Journalより引用
▶︎背景
①術後高リスク筋侵襲性尿路上皮癌における補助治療の確立を目的
②プラチナベースの補助化学療法(ADJ)に関する完全なコンセンサスが得られておらず、治療も確立されていない。
✅プロトコール・組入基準
・PS0〜2
・放射線・切除術を120日以内に実施したR0を対象
・膀胱癌・尿路上皮癌・腎盂癌の3癌種
・術前化学療法(NAC)施行例のypT2-pT4a or ypN+
・NACを受けてない場合は以下に該当する者
→pT3-pT4aまたは、pN+のシスアンフィット例
①eGFR60以下
②CTCAE4におけるGrade2以上の聴力障害・末梢神経障害症
③NYHA3〜4の心不全
④プラチナベースADJを患者が拒否した場合
・全身麻酔を必要とする手術から4週間前、局所/硬膜外麻酔は72時間前、TURBTは14日前に完了すること
・平均余命6ヶ月以上
▶︎除外基準(一部抜粋)「プロトコルより」
・部分膀胱・腎摘出術を受けた患者
→完全切除のみを対象としている?
・妊婦
・ステロイド、免疫抑制薬による治療が治験薬投与14日以内になされた者
など
▶︎患者背景(ニボルマブ群)
・PS0:63.5% PS1:34.6% PS2:6%
→ほぼ、PS0でのデータと解釈
・膀胱癌:79.0%
→自然発生率に合わせた組入。本結果については、膀胱癌がメインのデータと考えられる。
・pT2〜4a:92.1%
→比較的重度の患者対象
✅結果
▶︎主要評価項目:PFS( HR=0.70 CI:0.55-0.90)
ニボルマブ群:20.8ヶ月
*ニボルマブ群追跡中央期間:20.9ヶ月(0.1〜48.3ヶ月)
6ヶ月DFS:74.9% 12ヶ月DFS:62.8%
プラセボ群:10.8ヶ月
*プラセボ群追跡中央期間:19.5ヶ月(0〜50.0ヶ月)
6ヶ月DFS:60.3% 12ヶ月DFS:46.6%
▶︎層別結果:PD-L1≧1% DFS(HR=0.55 CI:0.35-0.85)
✅PD-L1に関わらず、ニボルマブ群の優位性が確認された。よって、投与に際してPD-L1測定は不要となった。
▶︎尿路外での再発のない生存率 HR=0.72
ニボルマブ群:
6ヶ月DFS:77.0% 12ヶ月DFS:65.1%
プラセボ群:
6ヶ月DFS:62.7% 12ヶ月DFS:50.4%
▶︎遠隔転移のない生存(12ヶ月の結果を抜粋)
全体集団:HR=0.75
ニボルマブ群:71. 2%
プラセボ群:58.6%
PD~L1≧1%集団:HR=0.61
ニボルマブ群:72.9%
プラセボ群:55.9%
▶︎QOLの変移
✅プラセボの観察群と比較し、QOL推移に大きな差はなかったと結論
▶︎EQ-VASの変移
🔍EQ-VAS
→垂直方向の線分で「想像しうる最高の健康状態」を100とし、「想像しうる最悪の健康状態」を0として、患者自身が健康状態を評価する方法
✅全体集団・PD-L1≧1%集団
共にベースラインよりも低下することはなく、QOLの低下しやすい術後の患者でも治療が期待できる。
✅フォレストプロットからの有効例の検討
・NAC実施例の方が、有効性あり
・膀胱癌へは有効性あり
・リンパ節転移0又は、郭清10個以下の症例に有効傾向
・pT3の深達度群
・pT0−4N2,3のリンパ節転移例
・喫煙歴に関わらず、有効傾向
・eGFR60以上の症例に有効傾向?
<検討事項>
・UTUC(上部・腎盂)での有効性は症例少数のため要検討
・eGFR60以下では有意差ないが、投与対象に含まれるため要検討
・深達度T3・リンパ節転移の有にて、優位傾向であったが全体解析では有意差があるため他の状態でも使用は要検討
▶︎安全性
ニボルマブ群:98.9%
プラセボ群:95. 4%
→ニボルマブに関連する有害事象
【頻度の高かった事象】
掻痒(23.1%)疲労(17.4%)下痢(16.8%)など
【グレード3以上の事象】
リパーゼ(5.1%)アミラーゼ(3.7%)の血清上昇、下痢(0.9%)大腸炎(0.9%)肺炎(0.9%)など
*肺炎による関連死亡
ニボルマブ群にて2例で発生
治療経過:発症時にグルココルチコイド治療にて開始にて対処した。と記載あり。
✅議論
・無病生存率において、プラセボと比べ2倍(20.8ヶ月vs10.8ヶ月)の効果があった。
・ニボルマブ単独療法の安全性は、過去に実施された試験と同様であった。
・追跡期間中央値の約20ヶ月で、再発・死亡率はニボルマブ群で48.2%・プラセボ群で57.3%
・Imvigor010では同様の患者集団において、無病生存に優位な差は示されなかった。
今後の可能性として、プラチナ治療との直接比較ではない点を考慮し、第一選択にはプラチナ治療を優先は変わらず実施。PD-L1に拘らず、術後アジュバントの治療がニボルマブ単剤にて開始できる。
効果としては、観察治療の無病生存期間は約2倍の20.8ヶ月。患者群として、膀胱癌のpT3N+以上・NAC実施歴のある患者へ優位傾向が見込まれる。今後の治療選択として、ADJ治療を念頭にNAC実施を積極的に検討する事も可能となった。腎盂・尿管においては、患者数も少なく今後のフォローアップにて効果には検討が必要と考える。